2007 Tucson Show Report Part 2 (2/1-2/6)

画像クリックでポップアップ表示します)

ショー後半のレポートをする前に情報をひとつ。Photographic Guide to Mineral SpeciesというCDをご存じでしょうか。6700以上の画像と全鉱物種の80%以上のデータが入っている、とても役に立つCD-ROMです。

またhtmlベースで書かれているのでMacでもWinでもブラウザで閲覧できます。写真の多くはJeff Scovilによるもの。見応えがあります。NYのExcalibur Mineralからネット通販で購入可能です。

http://www.excaliburmineral.com/

Reference→CD-Romsへ飛んでください。

2月1日。Westward Lookで開かれるショーのセットアップ・デーです。こちらでもPala InternationalのBill Larsonに僕の標本をおいてもらう事になっています。売れますようにと願いつつ...

出店者はCollector's Edge, Crystal Classics, Gobin, Rob Lavinsky, Graeber & Himes, Miner's Lunchbox, Wayne Thompson, Andreas Weerth, Wilensky Fine Minerals, Victor Yount, Exceptional Minerals, Mineralien Zentrum, Steve & Clara Smale, Herb & Monica Obodda, Mike Bergman, Alain Martaud等。そうそうたる一流ディーラーが名を連ねます。Crystal Classicsは去年東京国際ミネラルフェアに出店したのでご存じでしょう。今年も出店するはずです。Mineralien Zentrumも出店していますね。Harb & Monica Oboddaも数年前まで出店していました。

ツーソンでは同ミネラルフェアのオーガナイザーである大島仁氏とAlfredoの部屋で久しぶりにお会いしたのですが、話によるとこれからますます国際化を目指していくそうです。素晴らしいです。Collector's EdgeやRob Lavinsky, Wilensky Fine Minerals等をぜひ招待してもらいたい、と勝手に思っています。

ここで目にした標本のうち、撮影掲載許可の下りたもので特に印象に残ったものを幾つか。

フランスのAlain Martaudは毎年Bill Larsonと共にThe Collectorという名の下で出店しています。そんな彼が今年持ってきていたもののひとつがこのBrazilianite。宝石質完全透明の大きな結晶です。幅2.5 cmはあったと思います。

Bill Larsonが持っていた母岩付きのEuclase。長さ3 cmもある素晴らしい結晶でした。販売価格4万ドル。日本円にして約480万円ですね。僕の愛車Festiva Mini Wagonが3台買えてお釣りが来ます(笑)。驚きの価格ですが、彼がこの標本に支払った金額を聞いてさらに驚きました。彼の利益はとてもとても少ないです。

ちなみに去年彼が持っていたEuclaseは今年このショーで売れました。

これです↓

http://www.keysminerals.com/topics/topics060212.html

Graeber & HimesはMaine州で新しく産出した見事なローズクオーツを持ってきていました。

Rob Lavinskyの標本にはいつも驚かされます。イリノイの青い蛍石。素晴らしい発色です。

Herb & Monica Oboddaの部屋には長さ40 cmはありそうな巨大なKunziteが鎮座していました。

Crystal CllassicsのIan Bruceの部屋にて最高のRoughton Gill mine産Plumbogummite with Pyromorphiteを見ました。

この鉱物は"Minerals of the English Lake District, Caldbeck Fells"という書籍の表紙を飾っていて、その美しさにいつか入手したいと思っていたものです。僕は基本的にサムネイル〜ミニチュアサイズのコレクターなのでこの標本は僕向きではありませんでしたが。


この会場にある標本は誰もが認めるように高額です。数が少ない一流の標本、言い換えれば決して死蔵させたり失われたりしてはならない貴重な標本ですから当たり前です。洗練されたコレクターが所有し、生前は厳重に保管され、老後あるいは死後は手元を離れ、また別のコレクターの元へと渡るべき使命を持つ鉱物標本です。これはもう美術品の世界と何ら変わりません。

ツーソンから帰国後、江戸へ出張している畿内の日本産鉱物愛好家と久しぶりに我が家で会ったのですが、そのときに彼が「貴重な日本産鉱物を死蔵させてしまう人がいて困る」と話していました。

何年か前にある人から「とある老人が亡くなって蔵を調べたところ古い鉱物標本が出てきた。価値があるかどうか調べて欲しい」と頼まれたことがあります。それらは蔵で遊んでいた子供におもちゃにされたようで、ラベルは失われているわ標本はばらばらになっていたり壊れていたりで、無惨にも買い取り不可能な価値のないものになっていました(そう、実は僕は収集家からの買い取りもしているのです)。

標本や美術品はお金を出せば幾らでも買えます。当然、お金に余裕がある人ほど有利です。しかし問題なのは、その余裕のある人達が鉱物標本に対して正しい知識と知恵を備えているかです。ここでいう知識は鉱物学や地質学とは関係ありません。手に入れようとしている標本の価値を理解しているかどうかということ。一流の標本を持つ責任を負うことができるかどうかということ。これが重要です。

一流の標本や美術品は、どんなにお金を費やしても生涯自分のものにはならないのです。単に一時預かるだけに他ならないのです。

「そんなんじゃちっとも楽しくないじゃないか。そんなの趣味じゃない」と思う人もいるでしょうね。

ところがこれが楽しいのです。一般的な意味での「楽しさ」とはニュアンスが異なりますが。苦痛をともなう充実感とでも申しましょうか。そしてそこにあるのは鉱物に対する深い愛情です。仕事や子育て、奉仕活動と似ていると思います。独りよがりな快楽ではありません。道楽ではないのです。


知恵については説明するのは不可能です。知識と経験によって学びとるものですから。

だけどひとつだけヒントを与えることはできます。

買い方について、です。

多くの日本人は「同じ鉱物は要らない」とよく言います。「これはもう持っているから要らない」と。

これではコレクションは充実しません。数は増えるでしょうが。レベルの低い石は幾つあろうと無意味です。

賞賛される収集家というのは、同じ鉱物でさらに良い標本が見つかれば、以前の物は同好者や鉱物店に買い取ってもらい、それで得たお金を元手に良い標本を買います。良い標本であればあるほどいい値段で売れますし、業者も喜んで買い取ります。そうやってそれを続けて自分のコレクションを高めていくわけです。40年も経てば立派なコレクションが構築されているでしょう。しかもこれは、色んな鉱物をどんどん買い足していくよりも出費が少なくて済みますから効率的です。

しかしこういうことをするためには人脈が必要です。フットワークが必要です。経験に基づく知恵が必要です。老いてしまっては不可能です。また、付き合う鉱物店も必然的に絞られてきます。

とまぁ、ぐたぐたと思うまま書いてしまいましたが、こういう話はわかってる人にはわかるけどわからない人には...なんですよね。本来は鉱物屋がこんなことを言っちゃあいけません。

言っちゃあいけないついでに、日頃思っていることを書きます。鉱物の値段についてです。

僕は、鉱物の値段には相場がないと考えています。値段があってないもの、と言う人もいるでしょう(ちょっとニュアンス的にひっかかりますが。というのも鉱物標本にも「原価」がありますから。採掘費、人件費、旅費、維持費etc...決してタダではありません)

良い標本や価値のある標本にはどんな値段がついていてもいいと思います。良いものが高いのは当たり前。安さを売りにするなんざ、素人騙しの二流の石屋がすることです。問題は、プロの収集家が見たときにそれが適正な価格と判断されるかどうかです。

残念ながら、ここ3年ほど「これは適正とは言えないな」と感じることが多くなりました。今年も同様というより、さらにという感じです。

あるイギリスのお客様がメールで「去年ニューヨークであるディーラーが長さ30 cmのKongsberg産自然銀の標本を13万ドルで売っていた。なるほど大きいが、いくら何でも高すぎる。同じ標本が2個買える」と言っていました。13万ドルというと約1560万円です。

皆が皆、値段を上げているわけではありません。事情があって値段を上げざるを得ない場合も多々あります。例えば、パキスタンやルーマニアなどの鉱物は昔と比べてとても高くなりました。原因はインターネットです。現地の人達がネットカフェで鉱物屋のサイトを見て「こんな値段で売れるのか!じゃあもっと高くしよう」と考え始めたせいです。

それとは別に、なぜか一部の業者が納得できないほど値段を上げているのが現状です。

業者として情けないですが理由がさっぱりわかりません。なので以下は憶測です。

今までのお得意先が皆高齢になってしまい(これは事実です)、しかもすでに一流の標本を持っているので得意先として期待できなくなってきた。したがって新しい若いお得意先を見つけなければならない。それで値段を上げて、食いついてくる資金が潤沢な若者をターゲットにする。IT関連で儲けているのはお年寄りではないでしょう?

そう考えると、過去にTrinity MineralsのJohnがレポートで「投資目的で石を買うな」というメッセージを投げかけた理由がわかります(覚えていますでしょうか)。究極、標本は将来性を見越して買う部分は否定できませんから、なぜあのような事を彼が書いたのか不思議でした。

あれは熟練したコレクターに向けたメッセージではなく、裕福な未熟者に向けたメッセージではなかったのか、と。

アルフレッドから面白い話を聞きました。

今年のツーソンで一番売り上げたのはジュエル・トンネルだ、と。毎年安い鉱物を卸売りしている業者です。今までで一番の売上だったそうです。

安い物が飛ぶように売れる。アメリカの業界は振り出しに戻ったのかも知れません。あるいは単に、安い石を大量に仕入れて売る業者が増えただけの事かも知れません。

日本はどうなのでしょうね。

今年のショーの総括としては、僕にとっては去年よりやや良といった感じでした。ただ、人によっては最高の年かも知れません。どんなものを扱っているかによって見方が違うはずですから。

メインショーには行かなかったのですが、帰国後何人かの出店者やコレクターに聞くと去年より低調だったそうです。良かったという人は、少なくとも僕の周りにはひとりもいませんでした。

ただ嬉しいことに僕が託していた標本はメインショーの最終日の閉館まで1時間という時にやっと売れました。ひとつはイギリスの博物館が買ったとの事。とても嬉しいです。

販売は初日が勝負と思っていたのですが、これからは考えを変えなくてはなりませんね。じっくり見て見比べて慎重に考えて買う、という方向に向かっているようです。当たり前といえばそうですが。これもひとえに値段の高騰に原因があると思います。ある意味、正常なのかも知れません。

僕がこの仕事を始める前、日本がバブル全盛のころは、どんな標本も鉱物ショーで飛ぶように売れたそうです。異常だったんです。

ある僕の友人もそのころにバンバン買って、今から思えば失敗も少なからずなそうです。まぁ誰にでも勉強代を支払う時期はあるものです。

レポートもそろそろ終わりが近づいてきました。もう少し我慢して駄文にお付き合いください。

随分と写真の少ないレポートになってしまいました。実際、それほど多くは撮影していません。撮影許可を必ず求め、サイトへの掲載許諾もいただいた上で撮影していますので、結果こうなります。

僕は無断で写真を撮りサイトに載せるのは失礼だと考えています。実際、写真は撮らないで欲しい、サイトに載せるのは勘弁してくれと言う方もいます。コレクターの展示品などはむろん許可は必要ないでしょうが、人物や、自分が買ってもいない商品となると別です。石友である鉱物趣味のページの管理人さんも、他から借りてきた資料や画像をサイトに掲載する際には必ず許可を得ています。法律云々以前に人として当然の配慮だと思います。

ショーレポート自体に関して、僕は本来業者がすることではないと思っています。特に近頃はその思いが強いです。なぜならどうしても内容が主観的・自己中心的になりがちですし、下手すると宣伝ぽい内容になるから。そのうえ、営業上公表出来ないことも少なからずで内容が乏しくなりがちです。このレポートのように。書いていて恥ずかしいほど、ショーレポートと呼べる内容ではありません。単なる日記、無駄に時間を費やしているオヤジのぼやきです。

将来、毎年欧米の鉱物ショーに通い、客観的なショーレポートができる若くて優秀な日本人のコレクターが現れたときには、僕はレポートをやめるつもりです。元々文章力がないので誰かに代わってもらえないものかといつも思っています。

最後に...

2月4日か5日にAlfredoの部屋で出会った日本人のご夫婦様。もしこのレポートをお読みになりましたらぜひメールをください。冷蔵庫代わりの氷が溶け出したので急いで帰らねばならず、名刺もお渡しできずお名前も伺うことができませんでした。あのときは誠に失礼しましたm(_ _)m またお会いしたいです。